人はなぜ老眼になるのか?その原因は?
人は歳をとると、体のいろいろな器官が衰えてきます。
そして、眼の症状も老眼に代表されるように、なにかしらの症状や不具合が起こります。
年齢を重ねるとほとんどの人が感じるといわれている老眼。
では、どうのようにして人は老眼になるのでしょうか?
その原因を知るには目の見える仕組みを理解しておくと、わかりやすくなります。
実は、モノが見える仕組みと老眼は密接な関係があるのです。
それでは、モノが見える仕組みを、眼を構成する各器官の役割から説明します。
目が見えるしくみを知る
老眼の原因を知る前に、目の見えるしくみを知っておきましょう。
ここでは、正視の目を基準に解説していきます。
正視とは、遠くから目に入ってきた光が、角膜と水晶体で屈折して、眼底の網膜上で像を結ぶ(ピントが合う)目のことをいいます。
正視はあらゆる距離のモノにピントが合う状態の目です。
眼は大きく分けて、
- 下界からの光や形をとらえる眼球
- 眼球からの情報を脳へ伝える視神経
- まぶたやまつげの付属器
の3つに分かれます。
眼の働きの中心になる眼球は、直径約24ミリ、重さ約7.5グラムの球体をした臓器です。
眼球はさらに細かい部位に分かれて、それぞれが連携をとり役割をはたしながら脳へ視覚情報を送ります。
眼に入った光はまず、黒目の表面を覆っている透明な膜「角膜」を通過し、大きく屈折します。
角膜の奥にある水晶体とともにカメラのレンズの役割をしています。
角膜が濁ると、ものが見えにくくなり、凸凹があると乱視になります。
角膜を通過した光は、黒目の周りの茶色の部分にあたる「虹彩」という組織で、眼の中に入る光が調節されます。
カメラでいえば、虹彩は「絞り」の役割をしています。
厚さを変えてピントを合わせる水晶体
瞳孔を通過した光は、その奥にある水晶体でさらに屈折します。
水晶体は直径約10ミリくらいの丸く透明な組織で、近くのものを見る時は厚くなり、遠くのものを見るときは薄くなって光の屈折を調節しています。
この水晶体の働きによって、遠くの景色から手元にあるものまでのピントを合わせることを可能にしています。
そして、眼底(眼球を真上から見た場合の底の部分)にある網膜にカメラのフィルムのように光が像を結びます。
網膜にはものの形、明るさ、色などを識別するための視細胞が1億個集まっています。
視細胞でキャッチされた映像の情報は、網膜の表面を走る神経繊維に伝えらえ「視神経乳頭」という部分で束ねられます。
そして視神経となって脳に伝わり、像(映像・画像)として認識されます。
また、水晶体の後ろに、眼球の大部分を占める「硝子体」があります。
ゼリー状で眼球の形を保持したり、眼に対する外部からの圧力を和らげたりする働きをしています。
老眼の原因は水晶体にある?
眼球のさまざまな部位が加齢の影響を受けます
このように眼球の各部位が連携して機能しているので、どこにドラブルが起きても、ものが見えにくくなります。
加齢によって、体のさまざまな部位の機能が衰えていきますが、目も例外ではありません。
眼球の表面にある角膜は寿命200年といわれていて、加齢の影響を受けにくいのですが、その他の部位は加齢が原因で見え方に影響がでてきます。
水晶体は加齢が原因で変化する?
その中でも加齢の影響を受けやすいのが水晶体です。
水晶体はおはじきのような形をしていて、虹彩の後ろにある毛様体筋から出ているチン小帯によって周囲から支えられています。
毛様体筋は普段はリラックスして、水晶体は薄い状態を保ち、遠方にピントが合っています。
反対に近くを見るときは毛様体筋が縮むことでチン小帯が緩み、水晶体は自らがもつ弾性によって厚くふくらみます。
この動作により、近くにピントが合います。
しかし、加齢の原因により水晶体の弾力性は少しずつ失われ、硬化していきます。
そうなると、ふくらませて厚みを変化させることが徐々に不可能になり、近くに焦点を合わせる調整力が衰えて、見づらくなります。
この水晶体の衰えこそが老眼の原因なのです。
老眼は何歳くらいからはじまるのか?
解説してきたように、老眼は目のピント調節力の衰えが原因で起こります。
では実際にいつから老眼になるのでしょうか?
水晶体の硬化、調節力の低下が老眼の原因ですが、それは子どもの頃からはじまっているのです。
それが実生活の影響しはじめるのが、40歳から45歳くらいです。
初期症状は、近くのものを見たときにピントが合うまでに時間がかかるようになります。
これは水晶体が弾力性を失い硬くなってきたため、厚みを増すのに時間がかかることが原因で起きています。
老眼は、65歳くらいまで進行して止まります。
弾力性があり、ゼリー状だった水晶体は最終的にはせんべいのように硬くなり、ピントは1点にしか合わなくなります。
老眼になったら早めの対策を
・近くが見づらくなった
・新聞が読みにくい
・小さな文字が見づらい
40歳を過ぎて、これらの症状を感じたら、老眼を疑ってみてもいいでしょう。
まず大事なことは、老眼を放置しないこと。
できるだけ早急に眼科で検査を受けるようにしましょう。
老眼の対策には、老眼鏡が最も一般的な方法です。
(もちろんコンタクトレンズでも対策はできます。)
眼科で検査を受け、処方を書いてもらい、その上でメガネやさんで老眼鏡を作ることがベストです。
早めに老眼対策をすることで、進行を予防することができます。
現在では老眼の人口は約6000万人と言われています。
今後の高齢化社会を考えると、老眼人口はまだ増えていくでしょう。
そんな中で、歳をとると健康に注意するのと同じように、目にも気を配りましょう。
目も加齢の原因により、失明を伴うような眼病の発生リスクが高くなります。
40才を過ぎたら、一度は視力や眼圧とともに、眼底、視野などの眼のくわしい定期的な検査をすることがおすすめです。
眼病の予防をしながら、老眼とも仲良くつきあい、長寿とともに、健やかなアイライフを目指しましょう。